スマホの使い方が大きく変わる⁉12/18(木)から開始のスマホソフトウェア競争促進法(通称「スマホ新法」)とは?

先日、とあるゲーム系交流会に参加してきたのですが、その際に「スマホ新法」なるものをご紹介いただきました。
その時は初めて聞いた言葉で、「え?それ何?」という状況だったのですが、気になって詳しく調べてみました。
これは全員が知っておくべき内容だと思いましたので、今回は要約して詳しく説明したいと思います。

日本のスマートフォン(スマホ)市場は、長らく Apple の iOS と Google の Android という二大 OS が独占状態になっており、それぞれがアプリ配信や課金、ブラウザ、検索といったスマホの「ソフトウェア基盤」をほぼ独占・寡占状態で提供してきました。
その為、他企業が課金システムや決済方法などに参入したくても参入できない状態が続いており、自由な競争ができない状態にあります。

その為、アプリ開発者が iOSやAndoroid向けにアプリを配信する場合、App StoreとGoogle Storeという公式ストア経由に限られ、課金もAppleやGoogleの決済システムを使わざるを得ず、手数料(最大で約 30%)を支払わなければなりませんでした。

しかし、このような「実質的な独占構造」は、イノベーションの阻害、中小デベロッパーの参入困難、アプリ価格の高止まりなどを招き、自由な競争が生まれない、イノベーションが起きないという懸念が強まり、より多様で公正な競争を可能にすべきだ!という議論が高まってきました。
こうした背景のもと、生まれたのが「スマホ新法」です。

スマホ新法とは?

「スマホ新法」とは、正確には「スマホソフトウェア競争促進法」という法律で、覚えにくいのとまだ浸透していないからという理由で、今のところ呼びやすい「スマホ新法」と呼ばれております。

尚、スマホソフトウェア競争促進法の詳細は公正取引委員会にも詳しく説明がありますので、こちらもご参照ください。
https://www.jftc.go.jp/msca/

この法律は、2025年12月18日(木)から施行されます。

この法律は日本独自のものですが、同じような法律はヨーロッパでも既に実施されております。
厳密には少し異なりますが、EU諸国ではDMA(Digital Markets Act)というものが2023年5月から開始しております。

この法律の目的は、スマホ向け OS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン、課金システムなど「特定ソフトウェア」の分野で、特定大手企業の独占状態を改善し、公正で自由な競争環境を整えることにあります。
結果として、利用者の選択肢を広げ、新たなサービスやアプリが出やすくなる自由な市場を創ることが目的です。

この法律は、従来のように問題が起きた後に対処する「事後の独占禁止法的規制」ではなく、あらかじめ禁止事項や義務を定める「事前規制型」にあります。

指定事業者と対象範囲

この法で定められる「指定事業者」は、2025年3月の時点で以下の 3 社とされています。

  • Apple(iOS、App Store 提供、ブラウザなど)
  • iTunes株式会社(Apple の日本法人、App Store 提供)
  • Google LLC(Android、Google Play、ブラウザ、検索エンジンなど)

対象となるソフトウェアカテゴリは、OS、アプリストア、ブラウザ、課金システム、検索エンジンなど。これらを通じてアプリやサービスが提供されてきた「囲い込み」が規制の対象になります。

スマホ新法施行開始により期待できるメリット

中小デベロッパーやスタートアップにとってはチャンス到来です!

高額な手数料や審査のハードルが下がれば新たに参入がしやすくなり、ニッチなジャンルや実験的なアプリも期待しやすくなります。

ただし、信頼性やセキュリティ、ストアの信頼度という「質」で差別化する必要が出てくる為、誰でもアプリを出せるようになる分、品質管理や透明性、ブランドづくりがより重要になってきます。

既存の大手はビジネスモデルの見直しが避けられず、手数料の見直し、新規参入企業との競争が発生、サードパーティ決済への対応、ストアの公開基準の改定など、多くの変更を迫られる可能性が予想されます。

できる様になること

OS やアプリストア、ブラウザ、検索エンジンをユーザーが自由に選べるよう、デフォルト設定の変更を「簡易な操作」でできるように義務化される様になります。
その為、今までとは違い、ブラウザや検索エンジンの選択画面も表示させる義務が生まれる様になります。

Apple や Google は、サードパーティによるアプリストアの運営や、ウェブ経由でのアプリ配布を妨げなくなります
つまり、公式ストアに縛られずにアプリを提供・入手できる様に変わります。

さらに、アプリ内課金や決済について、「指定事業者の決済システムに限定」することを禁止される様に変わる為、ゲームヤアプリ内での決済方法が複数選べる様になります。
アプリ提供者が自社の決済手段を使ったり、他の支払い方法を利用したりできるようになる為、開発者にとって選択肢が増え、コストを下げることも期待できる様になり、結果的に競争が生まれ、消費者にとっては安価なアプリ・サービスを選べる様に変わることが期待できます。

禁止・制限される行為

スマホ新法では、指定事業者に対して以下のような行為を禁止しています。
違反すれば、課徴金などのペナルティの対象となります。

  • 指定事業者のアプリストアのみを使わせ、他のストアや配布方法を妨げること
  • アプリ提供や配信を自社ストアに限定し、競合ストアを使わせないこと
  • アプリの課金・決済手段を、自社システムに限定すること
  • OS・ブラウザ・検索エンジンのデフォルト等を不当に固定し、ユーザーが変更できないようにすること
  • OS/アプリストアなどで得たデータを、自社のアプリやサービスの優遇などに不正に利用すること

OS レベルで得られるデータを、不当に自社サービス有利に使うことや、競合アプリを差別的に扱うことを禁止される様になる為、例えばOSが持つ情報を使って自社アプリを優遇し、他アプリを排除するような行為が制限されるなど、市場を独占する様な方法は今後なくなっていくことでしょう。

このスマホ新法は、一見メリットばかりにも見えるのですが、実は大きな問題を抱えております。

ユーザー体験の分断・混乱

「どのストア・OS・ブラウザから決済を行うか?」を自分で選べる自由が生まれるのは大きなメリットではありますが、言い換えれば「選択の手間」「サポートの複雑さ」を伴う可能性が生まれてきます。
特に、非公式ストアや少数派のストアを使った場合、アプリの互換性、アップデートの速さ、サポート体制などで制限・遅延が起こる可能性があります。

セキュリティ・詐欺アプリの増加リスク

今までは、App StoreやGoogle Storeが悪質なアプリを排除してくれていたので安心できたのですが、これからはApp SotreやGoogle Storeでの監視や排除ができなくなるという側面も生まれてきます。

公式ストア以外のストアやウェブ経由でのアプリ配布が可能になると、これまでのような厳格な審査が行われないアプリが出回る可能性があります。
結果として、脆弱性のあるアプリや、悪意のあるコードを含むアプリ、詐欺アプリなどが参入してくると予測されております

その為、今まで何の警戒もなくダウンロードしていたアプリが、実はマルウェアを仕込まれていたり、悪質な決済システムが仕組まれている…という可能性が出てくるということです。
ユーザー自身がしっかり自己防衛をし、アプリのダウンロードをする為に「このアプリは問題ないだろうか?」と念には念を入れてダウンロードをしないと、大きな問題に巻き込まれてしまう可能性が出てきます。

上記の様なトラブルが2025年12月18日(木)以降に発生してくる可能性が予測されております。

ではどの様に対策をすればよいのか?具体的な対策方法をお伝えします。

広告からのアプリをダウンロードしない

やや乱暴な表現にはなりますが、広告からのダウンロードは鵜吞みにせず、一度立ち返って本当に安全か?を確認する様にしたほうがよいでしょう。

ウェブ広告の場合、パッと表れてパッと消して行方をくらますこともできる為、追跡することができなくなります。

その為、アプリの発信元をできるかぎり確認する様にし、少しでも「おかしいな?」と思ったらダウンロードするのを控える様にしましょう。

公式のアプリか必ず確認する

例えばゲームアプリの場合、公式からのアプリであれば安心ですが、公式を装った広告やアプリには要注意です。
必ず、本当に公式からのアプリなのかを確認する様にしましょう。

安全な方法の1つとして、公式のウェブサイトからのリンクでダウンロードする方法があります。

必ず発信元を確認する様にしてください。

スマホ新法は、これまで大手企業に独占されがちだったスマホのソフトウェア/アプリ領域に、競争という風を吹き込む試みです。

理論的には、「選択肢の拡大」「価格低下」「イノベーションの促進」など、多くの人に恩恵をもたらす可能性があります。

しかし、それは同時に
・信頼性・安全性の自助努力
・ストアやアプリの質の見極め
・情報リテラシーの必要性
といった、新たな課題・責任を私たちユーザーや開発者に課すことでもあります。

スマホ新法が「スマホの未来を豊かにする制度」となるか、それとも「混乱とリスクを抱える制度」になるかは、私たち一人ひとりの「使い方」「選び方」「意識」がより重要になってくる-
そんな時代の転換点を、この法律は示していると思います。

以上、スマホ新法あらためスマホソフトウェア競争促進法について、背景とメリット・デメリットを書いてみました。

ユーザーとしては、新しく恩恵を受ける部分もあれば、新たなトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

👉メリット

  • 新しい決済業者が新規参入することにより、ユーザーはよりオトクな決済方法を選べる様になる
  • 決済業者の新規参入により、新しいイノベーションが生まれ、市場の成長が期待できる

👉デメリット

  • 某弱なセキュリティソフトや悪質なアプリが参入する可能性が発生する為、情報漏洩や金銭トラブルに巻き込まれる可能性がある
  • 今までは良くも悪くも単一の決済方法によりシンプルで分かりやすかったが、複雑化する可能性が生まれる

これからは、より一層自分自身で対策を取り、トラブルに巻き込まれない様に注意を怠らない様にしましょう!